新世言

 稲藁の教え

                 倫理研究所理事長  丸山 敏秋    


福島原発事故の放射能漏れによる被害は、いったいどれほど広がるの
か。いつまでつづくのか。
 今年の七月には福島県で、稲藁から高濃度の放射性セシウムが検出
された。昨年秋の収穫時から水田に放置され、三月の原発事故後に集
められた藁だったという。この稲藁を飼料とした牛の肉から、やはりセシ
ウムが検出され、大問題となった。被害は近隣県にまで及び、風評によ
ってさらに拡大した。
 福島県の被災者や被害者は、未来が見えないだけに一段と苦しみが大
きい。「うつくしま福島」の再生のために、全国からの支援とエールを途絶
えさせてはならない。
 ところで、牛肉からセシウムが検出された事件から、稲藁について再認
識させられた。牛の飼料に稲藁が使われていたことを知る人は少ないだろ
う。欧米的な都市生活が広がった今日、稲藁は身近から消えてしまった。
 稲の果実であるコメを日本人は主食としてきた。手間隙かけて稲を栽培
し、品種改良を重ねて、最高品質のコメを収穫してきた。日本民族の命を
支える稲とコメは信仰の対象となり、神に捧げる祭りの供物としてもコメは
欠かせない。
 コメを収穫したあとの大量の副産物が藁であり、活用範囲は広い。たとえ
ば、藁で布団を作って敷物にする(藁布団)。世界に類のない畳の中身にも、
乾燥させた稲藁を強く圧宿した素材(藁床)が使われてきた。これは大変な
発明で、藁床は適度な弾力を保ち、保湿性や空気浄化作用が抜群である。
 稲藁はまた蓑や靴や衣類の素材にもなる。家の屋根に使われ、土壁の
中にも塗り込められた。容器やホウキや俵や縄などにも加工され、燃料や
肥料にもなる。稲藁に宿る菌が蒸した大豆を発酵させれば、納豆という健
康食品ができあがる。
 かくも稲藁は農村生活を底支えしてきた。藁だけではなく、籾殻も通気性
のよい枕の材料になり、肥料としても使える。糠は肥料にも漬物用の床に
もなる。稲という植物には捨てるところがないのだ。



     


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