新世言 10月号

 太陽のごとく                                      倫理研究所理事長   丸山 敏秋

 今年の四月下旬に、皇居のお堀端にある東京国立近代美術館に足を運ん
だ。「生誕百年 岡本太郎展」の会期終了が迫り、大勢の観客が押しかけて
いた。その半数以上が大学生のような若者たちである。数年前から岡本太郎
ガ若者たちの憧れの的となっていると聞いていたが、事実らしい。
 ギフトショップでは「太陽の塔」のミニチュアが売れに売れていた。二月末か
らはNHKドラマ「taroの塔」(全四回)も放映された(六月にも再放送)。岡本
の波乱万丈の人生を初めてドラマ化したものだ。
 かってテレビのバラエティー番組で岡本太郎を見た中高年には、「ズケズ
ケものを言うヘンなおじさん」という印象が強く残っているのではないか。しか
し、岡本は画家でありながら、パリで二十世紀の最先端の知識を身につけた
教養人であり、戦後の日本に彗星のごとく現れて芸術の革命を企て、「縄文」
の世界や日本の原像を発見した希代のマルチ」人間だった。
 1970年の日本万国博覧会(大阪万博)では総合プロデューサーを引き受
ける。しかし岡本は、先進諸国が技術や産業の発展を誇り合う万博に否定的
だった。大阪万博の「人類の発展と調和」というテーマも気に入らなかった。
だから、得体の知れない巨大で「ベラボー」な塔を製作し、万博会場の中心に
打ち立てたのだ。
 筆者が岡本太郎を意識したのは、かれこれ三十五年ほど前になる。以来、
その情熱やまなざしに惹(ひ)かれてきた。愚直なほだ「難きを選ぶ」という
生き方を貫いた岡本に対して、敬意を払ってきた。東京の府中市にある多磨
霊園の墓所にもよくお参りする。岡本のユニークな彫像作品が、自身と両親
の墓石となっている。
 だから、岡本太郎が現代の若者たちを魅了する理由(わけ)がわかる気が
する。ひとことで言えば、岡本が「純情」な人だからだろう。
 水のごとく自在で臨機応変、と同時に、火の燃え盛るごとく情熱をギラつか
せてチャレンジする。あんなマネはとてもできないし、才能も違う。 けれども
「太郎さんのように生きられたら・・・・」「あんな日本人がいたんだ・・・・」と若
者たちは心惹(ひ)かれるのだ。





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