新世言  10月号

 新世言  10月号つづき
純粋でひたむきな姿
 岡本は虚飾を嫌い、いつでも本音を語って行動した。周囲に妥協はしな
い。驚くべきことに、彼は自分の絵を売ろうとしなかった。芸術は常に大衆
のものであり、無償・無条件であるべきだという信念があったからだ。
 『芸術は太陽と同じだ。太陽は熱も光も、無限に与える。ひなたぼっこし
ても、”おい、あったかかったろう。じゃ、いくら寄越せ、なんて、手を差し出
したりしないだろう。?」
 以前、美術館に展示されていた岡本の絵が斬りつけられる事件が起き
た。周囲がアタフタする中で、悠然と彼は言った。
 「切られてなにが悪い!切られたらオレがつないでやる。それでいいだ
ろう。子供が彫刻に乗りたいといったら乗せてやれ。それでモゲたらオレ
がまたつけてやる。だから触らせてやれ。」
 利害損得ばかりが先行する世の中だからこそ、岡本のそうした姿勢が
新鮮に映る。若い頃にパリでピカソの絵に衝撃を受けて活路をひらいた
彼は、すぐさま決意したーー「ピカソを超えてやる」と。岡本太郎はひたす
ら前向きだった。
 世知に長(た)けた大人たちは、岡本の発言を大言壮語とバカにするか
もしれない。けれども若者たちは、永遠の子供のよいな彼の純粋でひたむ
きな姿に感動する。
 岡本太郎にはまた「思想」があった。だから絵画も彫刻も、文章も写真
も、どこを切り取っても作者の一貫した顔が現れ出てくる。それも若者には
大きな魅力だ。終始一貫せず、状況によってコロコロと意見を変え、場当
たり的に発言する大人たちを、彼らは多く見過ぎている。
 六千四百万人以上もの入場者があった大阪万博という世紀の祭典は、
終わるとすべての建造物が撤去された。ただ一つ「太陽の塔」だけを残し
て・・・・。岡本太郎の魂(たましい)は今もなお赫々(かくかく)と生き、塔
の上の金色の顔から、変わりゆく日本を見つめ、叱咤激励しつづけている
に違いない。
 それを受けとめる若者たちがいるかぎり。

          新世言10月号   倫理研究所理事長  丸山 敏秋





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