新世言

 「見えない脅威」に立ち向かう

                   倫理研究所理事長  丸山 敏秋          

  
三年ほど前から、人類が立ち向かう「見えない脅威(きょうい)」につい
て書いたり話したりしてきた。
 たとえば、新型インフルエンザである。WHO(世界保健機関)は、野鳥
や豚などのウイルスがいつ変異して感染が拡大するか警戒してきた。
二00九年四月にはメキシコで人への感染が確認され、六月にはフェーズ
6の世界的流行(パンデミック)となった。致死率の高い強毒性にまで変異
しなかったのは幸いだったが、鳥インフルエンザは日本でも毎年のように
猛威をふるっている。
 あるいは、お金も「見えない脅威」となる。二00八年九月にアメリカの投
資銀行りーマン・ブラザーズが破綻し、それが世界的な金融危機の引き
金となった。日経平均株価も大暴落を起こし、六千円にまで下落。その影
響は深刻で、政権交代の要因ともなった。
 お金はもともと実体がない。金や銀は貴金属としての値打ちがあるが、
紙幣は印刷された紙きれにすぎず、預金通帳には数字がならんでいるだ
けだ。その数字化されたお金を巧みに操作して巨利を得ようとする金融
工学が、世界を大混乱に陥れた。
 西暦二千年という新しいミレニアムを迎える前から、日本人の年間自殺
者は三万人を超えるようになった。原因を特定できない「うつ」が広がって
いる。得体のしれぬ「見えない脅威」が現代人の生きる力を蝕(むしば)み、
萎えさせているのだ。「無縁社会」という不気味な言葉まで流行るように
なった。
 そしてさらに、今年になって「原発震災」が発生した。
 予期せぬ大事故への対応は、あまりに杜撰(ずさん)だった。報告の内
容がコロコロ変わる。放射能被害については「ただちに健康に影響を及ぼ
す線量ではありません」と繰り返し報道された。長期的には被害が出る、
ということではないのか。被災した原発周辺の住民はもちろん、国民は不
安と不信感を募らせてきた。
 なにより驚愕(きょうがく)したのは、「原発は安全だ」という通念が脆(もろ)
くも崩れたことだ。われわれの認識が甘かった。ただなんとなく、安全だと
思い込んでいた。いつの間にか知らないうちに、地震列島に五十四基もの
原発が設置されてきたのだ。 

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