新世言

 よみがえる
「日本の愛唱歌」
           倫理研究所理事長  丸山 敏秋
 
日本人はよく歌をうたう。神話の時代から歌謡があった。高間原(たか
あまはら)を追放されたスサノオノミコトが、出雲の地でヤマタノオロチを
退治したあと、妻(クシナダヒメ)を娶(めと)ったときに詠んだという歌を
『古事記』は伝えている。
   八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
 神に奉納するために奏されるお神楽でうたわれる歌(神楽歌)には
三十七曲があるという。そうした荘重な歌から、恋する人にささやく甘い
歌まで、たくさんの歌を先祖たちは口にしてきた。伝統の和歌も、節をつ
けてうたってこそ、その深い味わいがわかる。
 歌をうたったり聴いていると、心は別の世界へ飛び出していく。
 各地の民謡には、仕事の苦しさをまぎらわせ、作業がはかどるように
うたわれたものが多い。嬉しいときにうたえば、喜びが何倍にもなる。お
目出度い時にうたえば、いよいよ目出度くなる。歌を通して、父が現れ、
母を感じ、旧友たちがよみがえる。
 うたいながら心は、過去にも帰れれば、未来にも翔べるのだ。そうして
現(うつつ)に戻った心には、生きる力が増している。
 うたうには、メロディーがなければならない。たとえ歌詞を忘れても、メ
ロディーさえ思い出せばうたえる。「アアア」でも「ラララ」でも歌になる。
わたしたちの心には、かつて口ずさんだり聴いたりしたメロディーが、ど
れほど潜んでいるだろう。
 筆者の場合、亡き父親の若い頃を懐かしく思い出させてくれる童謡が
ある。それは「ゆりかごのうた」(北原白秋作詞・草川信作曲)だ。幼い
時分に何度もこの歌を聴いた記憶がある。
   ゆりかごのうたを   カナリヤがうたうよ
   ねんねこ  ねんねこ  ねんねこよ
 歌詞は四番まである。素朴なメロディーがなんとも愛(かな)しい。

 

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