新世言

「道」を拓く
 大災害が発生すると、まずは人命を救助する。今回は超巨大な津波に数
万人もの命が奪われたが、自衛隊や消防・警察の獅子奮迅の働きにより、
約二万人が救助されたという。救助と同時に急がれるのは何か。それは、
道路の復旧である。被災地を訪れて、その惨状とは別に、強く印象に残っ
たのが道路の存在だった。
 道がなければ、人も物資も運べない。道路の有無は死活問題なのだ。道
が通じてはじめて、被災地に希望の光が差し込んでくる。
 だが、瓦礫と化した町の中に道を通し、破損した道路を修復するのは容易
でない。陥没や亀裂が無数に生じた東北自動車道は、早急に応急処置を
施すことで、人の移動も大量の物資の運搬も可能になった。被害状況が次々
に報道される陰には、黙々道路復旧に尽瘁した人たちがいたのである。
 震災後ただちに派遣された自衛隊は頼もしかった。非常時に体を張って立
ち向かうのは、男でなくてはできない。気も狂うほど凄惨な初期の状況下で、
彼らは敢然と任務をこなした。時には遺体を背負い、食べ物がない被災者に
は自分の食糧を分け与えたという。
 現地で行き交う若い自衛官たちの凛々しさに、心洗われる思いがした。命
がけで原子炉に放水したレスキュー隊員たちもそうだが、非常事態は男の
本能を目覚めさせる。使命感に生きる彼らを支えたのは、家族の存在であり、
国民の応援だった。大震災は日本国民に、弛みかけていた民族という大家
族の絆を結び直してくれたのだ。
 その絆を基に、日本は創生への道へ踏み出す。防災対策はもちろん、エネ
ルギー施策を含む様々な領域で、未来に道を拓くプランニングが始まってい
る。それをなんとしても成就させねば、犠牲者や被災者に申し訳が立たない。
 個々の生活レベルにおいても、新たな道を敷設しよう。平素より地球の猛
威を畏れかしこみ、お互いの身を守る備えをしておくこともそうだ。備えには
「物」と「行動」と「心」の三種がある(拙著『実践のヒント』参照)。大量消費に
駆り立てられてきた愚かさを戒め、無駄なエネルギー消費を省こう。地球倫
理の理念でもある「共尊共生」の精神を、平素から高めて実践しよう。
 改めるのは創るためである。文明のありかたを根底から見直す秋(とき)が
きた。日本創生のうねりを巻き起こさなくてはならない。

               新世言・6月号 倫理研究所理事長 丸山 敏秋



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