新世言

       無縁か有縁か
              
              倫理研究所理事長  丸山 敏秋      

 八十代半ばのある男性が、ひっそりと亡くなった。筆者が子供の頃に
可愛がってくれたその人は、生涯独身で、親戚とも縁遠かった。
 退職してからは世を避けるように、趣味のカメラを静かに楽しんでいた。
脳溢血で倒れたまま、小さな居宅で発見されたとき、死後二週間が過ぎ
ていたという。誰に看取られることもなく、一人淋しく冥土に旅立ったと聞
いたときには胸が痛んだ。そうした孤独死が全国で増えつづけていると
いう。
 昨年一月三十一日のNHK番組「無縁社会〜”無縁死、三万二千人の
衝撃〜」の反響は大きかった。取材班はさらに調査を進め、十一月には
同タイトルの本を文芸春秋から出版。今年の二月にも「無縁社会」をテーマ
にした番組が連夜放映された。
 東京都内で百十一歳の男性のミイラ化した遺体が発見され、「消えた
老人」が全国に多数いるとわかったのも昨年のことだ。年金の不正受給
も続々と発覚した。孤独死(無縁死)が年間3万二千人とは、自殺者の
年間総数にほぼ等しい。
 結婚したくない、したくてもできない若者が増加しているという。他人と
の関わりを避け、ひきこもる傾向も依然として強い。このままだと二十年
後には、一人で暮らす単身所帯が、全所帯の三0〜四0%に達すると予
測されている。
 家庭が壊れてしまい、家族がいるのに孤独死に追い込まれたり、遺骨
の引き取り手のないケースが増大するのは憂慮すべきだ。単身者が孤
立しやすい社会が健全なはずはない。
 しかしまた「無縁社会」という不気味な言葉の広がりが、国民の不安を
煽るようでは困る。世の中が冷たいから、と自助努力を怠る人間が増え
るのならば、本末転倒も甚だしい。
 
目に見えないつながりを感じ取る
 
 縁とは、つながり・結びつき・関係性のことである。因果関係がはっき
りわからない結びつき、というニュアンスが強い。
 「君と出会ったのも何かの縁だろう」とか「前世からの縁であなたと結
ばれたに違いない」などとよく言う。縁という言葉を用いると、なんとなく
納得し、安心させられる。
 だから、縁が感じられない人間関係は切れやすい。事が終わればハ
イさようならだ。「金の切れ目が縁の切れ目」とも言う。お互いに縁が感
じられない結婚は、たとえ熱しても冷めやすい。親子や兄弟姉妹の血縁
は非常に強固なつながりのようだが、縁の意識がはぐくまれなければ、
結びつきは弱い。


















  

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